映画が英語学習として使えるのはリスニングを強化できスピーキングのボキャブラリーを増やすうえでも役立つ情報がふくまれているからです。
『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』では、チャーチルの名言や英語のセリフからリスニングの強化に役立つ英語フレーズを紹介します。
We shall never surrender. われわれは決して降伏しない。
これはチャーチルが演説し名言としていまも語り継がれている言葉です。
なにか決断をしなくてはならないとき、まわりの意見に流されそうになり「本当にそれでいいのか?」と考えてしまうことはありませんか。
そんなとき自分がとるべき行動に背中を押してくれる意見をきくと勇気づけられるはず。
ウィンストン・チャーチルがイギリス国民に問いかける質問とその答えとなるセリフは映画の名場面であり、そのシーンでの名言やセリフはリスニング、スピーキングの強化に役立ちます。
では、チェックしていきましょう。
『ウインストン・チャーチル』あらすじ
引用:MIHOシネマ
『ウインストン・チャーチル』映画のセリフや名言に学ぶ英語フレーズ
Go To The People
第二次世界大戦さなか、ナチスドイツの圧倒的な軍事力は西ヨーロッパ全土を占領する勢いでした。つぎつぎに同盟国が降伏していくなかイギリスにも脅威が近づいてきます。
戦争でおおくの犠牲者をだしたくないイギリス政府の閣僚たちはドイツと和平協定を結んだほうがいいと提案しますが、首相ウィンストン・チャーチルは戦いつづけるとゆずりません。
Winston Churchill: Nations which go down fighting rise again, and those that surrender tamely are finished.
勇敢に戦って負けた国はまた起き上がれるが 逃げ出した国に未来はない
引用:IMDb
◎英語メモ
tamely おめおめと
しかし、戦況が悪化していくなかで仲間から信頼を失い和平協定を結ぶほかないようところまでチャーチルは追い込まれます。
もはやだれも味方にはなってもらえない。失望しているチャーチルに救いの手を差しのべたのはイギリス国王のジョージ6世でした。
Go to the people. Let them instruct you.
街にでて人々の声を聞くんのだ
Quite silently, they usually do. But tell them the truth unvarnished.
声なき大衆の声を 彼らにありのままの真実を話せ
If invasion is imminent, if our troops in France are lost, they must be prepared.
イギリス本土決戦が近いのなら 彼らも覚悟を決めねばならん
引用:Darkest Hour
◎英語メモ
the people 国民
unvarnished 「ありのまま」を最後に配置して truth 「真実」を強調している
imminent 差し迫った(ここでは侵略という悪いことが迫っているという意味で使われている)
どちらかというとチャーチルをよく思っていなかったジョージ6世ですが、ナチスドイツの総統ヒトラーを怯えさせることができるのはチャーチルを置いて他にいないと確信したからこそサポートする側にまわるのでした。
内閣では腹をわって話ができる仲間がいなかったチャーチル。しかし、ジョージ6世からの思わぬひと言にはげまされ、チャーチルは議会にむかう途中で国民がつかう地下鉄に乗りこんでいきました。
イギリス国家の首相であるチャーチルが地下鉄に乗ってくるなんて!
一般国民たちは地下鉄にチャーチルが現われたのだからみなが驚くのも当然でした。
しかし、ユーモアのセンスあるチャーチルの話しかたに乗客たちの緊張もほぐれて車内の空気は和んできました。チャーチルはすかさずジョージ6世のアドバイスにしたがって国民がどんな気持ちでいるのかと問いかけます。
What Is Your Mood?
You, the British people.
君たちイギリス国民は今はどんな気持ちでいるかね
What is your mood? Is it confident? If confident, how confident?
君らは迷いはないか
引用:Darkest Hour
◎英語メモ
ナチスドイツの勢いにイギリスが本土決戦をむかえるのはそう遠くないはずとイギリス国民はうすうす感じてはいたはず。しかし、国民は本当のところどう感じているのだろう?
チャーチルは、国民の本心を聞きたいので mood 「ムード、気持ち」をつかって直接問いかけています。
国民のなかには戦況が劣勢でいるというものもいると話すとチャーチルもすぐさま国民を奮い立たせる言葉で国民と気持ちを通いあわせていきます。
男:Some people say it’s a lost cause.
戦況は劣勢だという者もいますが。
チャーチル:No, lost causes are the only ones worth fighting for.
だからこそ戦い甲斐があるのだ。
女:Too right
そのとおりです。
引用:Darkest Hour
◎英語メモ
a lost cause (やったところで)見込みのない(戦い)
ひとつくらい戦況が悪いからといって負けられない
チャーチルは「勝てそうにない戦い」 lost causes が
いくつもあったとしても諦めてはダメだと国民を鼓舞しています。
チャーチルは、2つのたとえ話をして国民の正直な気持ちはどうなのか率直に質問してみます。
チャーチル:
If the worst came to pass and the enemy were to appear on those…those streets above, what would you do?
最悪の場合を想像してみてくれ もし敵がロンドンの街中に現われたらどうするかね?
国民:
Fight. Fight the fascists.
戦います ナチスと戦います
Fight them with anything we can lay our hands on. Broom handles if we must. Street by street. They will never take Piccadilly.
棒でもなんでもつかって ホウキしかなかったとしても全員で戦います ピカデリーは渡さない
チャーチル:
Never take Piccadilly, indeed.
ピカデリーは渡さないか、まったくだな(笑)
引用:Darkest Hour
◎英語メモ
if the worst came to pass~ もし最悪のことが起きたら~ 仮定のことを言うときは文法的に動詞が過去形になる。 同様に、if the enemy were to appear~ もBe動詞が過去形に変化している。
the fascists ファシスト ナチスドイツによる独裁政権
lay on~ 用意する、準備する (同意語 prepare)
broom handles ホウキの棒
Piccadilly ピカデリー ロンドンの中心地にある通り
indeed 本当に まったく
国民の真意を聞いたことで大いに勇気づけられていくチャーチル。つぎのセリフは、チャーチルはイギリス国民がじぶんと同じ気持ちでいることを確信するシーンです。
チャーチル:
What if I put it to you all that we might if we, if we ask nicely to get very favorable terms from Mr. Hitler if we enter into a peace deal with him right now. What would you say to that?
では、もしもわが国がヒトラー氏に頭をさげてイギリスに好ましい条件を引きだし 和平協定を結んだとしたら君らはなんて思うかね
国民全員:
Never! Never! Never! Never! Never!
ダメです 絶対ダメ!
引用:Darkest Hour
◎英語メモ
very favorable term 好条件
enter into~ (契約など)結ぶ 締結する
絶対にダメだという声のなかには少女もいて、じぶんがすんでいる国、土地が違う国によって占領されてしまうくらいなら最後まで戦いぬくという気持ちは勇ましさで胸があつくなりますね。
チャーチルは古代ローマの詩人ホラティウスのことばを引用して少女に語りかけます。
チャーチル:
Then out spake brave Horatius, Captain of the Gate: To every man upon this earth death cometh soon or late. And how can man die better that facing fearful odds for the ashes…
そして語り手であるホラティウスは言った 地上のあらゆる人間に 死は遅かれ早かれ訪れる ならば強敵に立ちむかう以上に 尊い死があろうか
黒人の男(チャーチルにあわせて):
For the ashes of his fathers and temples of his Gods.
祖先の遺灰のために 神々の殿堂のために
引用:Darkest Hour
◎英語メモ
spake speak (話す)の過去形 現代では spoke だが古典英語のため spake
cometh come(くる、訪れる)の古典英語
facing fearful odds ひどい形勢に向きあう=強敵に立ちむかう
チャーチルは国民も最後まで戦うつもりでいることに感激して涙ぐんでしまいます。
少女に「泣いているの?」と聞かれるとチャーチルは答えます。その答え方は少女に戦争の惨さを遠回しにつたえる言い回しをつかっています。
少女:Are you crying?
泣いているの?
チャーチル:Yes, yes. I, I blub a lot, you know. You’ll, you’ll have to get used to it.
そう、わたしは泣き虫なのだ キミたちも馴染んでおくれ
引用:Darkest Hour
◎英語メモ
you’ll have to get used to it. 君たちも馴染んでおくれ。
チャーチルの意図することは、敵との戦争が激しくなれば犠牲者もたくさんでるだろう。そのたびに悲しくて涙が止まらなくなることもあるかもしれない。だけど、戦争に勝つまでは辛抱しておくれという意味で遠回しに戦争の惨さをつたえています。
Reason With A Tiger 張りつめた気持ちを動物で表現!
ナチスドイツとの戦いに勝ち目がみえてこないイギリス政府はイタリアが仲介で申し入れてきた和平協定を結ぶかどうか話し合いが行われる。和平協定などワナだとチャーチルは見破りますが政府は腰が引けています。
チャーチルは、判断をまちがえてしまうことの怖さを指摘していて、うっかり和平協定など結べば独裁者にいいようにやり込まれてしまうと主張。このとき動物に例えた危機的状況をかたるチャーチルの表現が利にかなった面白い言いまわしです。
You can not reason with a tiger when your head is in its mouth.
頭を食われながら トラに道理を説くことはできん!
引用:IMDb
◎英語メモ
reason with 道理を説く
トラに噛みつかれながら「おい、そういうことをするなお前」と言ったところで既に手遅れだということを表している…噛みつかれる前に手を打てという意味
You Are Strong Because You Are Imperfect 落ちこんだときに響くフレーズ
映画ではチャーチルの妻クレメンティンが仲間にそっぽ向かれ落ちこんでいるチャーチルを元気づけるシーンがあります。
政治家として大成しようと生きてきたチャーチルですが、映画を観ているかぎりでは浪費家なうえに家族を顧みなかったようで妻から小言をいわれるシーンも描かれています。
しかし、チャーチルが途方に暮れているとしずかに寄りそって言葉をかけるクレメンティン。よき理解者がいるというのは心強いですね。
You are strong because you are imperfect. You are wise because you have doubts
欠点があるから強くなれる 迷いがあるから賢くなれる
引用:IMDb
◎英語メモ
imperfect 不完全 欠点
Those Who Never Change Their Mind Never Change Anything 強気なフレーズ
チャーチルの妻クレメンティン、国王ジョージ6世、地下鉄で乗り合わせたイギリス国民。それぞれの気持ちや労いの言葉に勇気づけられたチャーチルは国難に立ちむかうために何をすればいいか、それをどうつたえるべきか行動にうつします。
議会にもどったチャーチルは、イギリスはナチスドイツと平和協定を結ぶべきでない、決して降伏してはならないと強く訴えました。
そして、迷いのなくなったチャーチルの演説は議会を納得させイギリスは勝利するまで戦い続けることになります。
少し前までは和平協定を受けいれるしかないと落ちこんでいたチャーチルが自信に満ちあふれ徹底抗戦を叫ぶようすに仲間のひとりが不思議がって「気が変わったのか?」と聞きました。
するとチャーチルは答えます。このセリフは聞いていてスカッとできる勇ましいフレーズです。
Those who never change their mind never change anything.
気も変えられない奴に 国が変えられるか
引用:IMDb
◎英語メモ
never change 「気が変わらない」という同じフレーズをくり返すことで「大きな決断には言うことがコロコロ変わるくらいでないと決められないものだ!」と力強い意志が感じられるセリフです。
Success Is Not Final, Failure Is Not Fatal, It Is The Courage To Continue That Counts
映画の終わりにはチャーチルの名言のひとつが登場します。開戦当初は追いつめられていたイギリスでしたが、チャーチルが決断した徹底抗戦によってイギリス国民の心はひとつにまとまり6年にわたる戦争に勝利します。
勝敗を分けたのは、どんなにうまく行かないことが続いたとしても、あきらめず挑戦しつづける勇気こそが大切なのだと教えてくれるフレーズです。
Success is not final, failure is not fatal, it is the courage to continue that counts.
成功も失敗も終わりではない 肝心なのは続ける勇気だ
引用:IMDb
◎英語メモ
final 最後の
fatal 致命的な
courage 勇気
『ウィンストン・チャーチル』を使って英語を伸ばす4つのステップ
もし、あなたにとって『ウィンストン・チャーチル』が好きな映画であれば英語力を伸ばすために次の4つにチャレンジしてみましょう。英語のリスニングやボキャブラリーを増やすのに効果的です。
- まずは映画そのものが楽しめるよう日本語字幕や吹き替えで観てストーリーそのものを理解する(大半の映画は中学~高校一年まで程の英語で間に合うし、わからない単語があったら調べておきましょう)
- つぎは耳を慣らすために映画のセリフがどう話されているのか英語の「音」を聞いていきます
- 自分の好きなシーンがあれば、そこで使われているセリフをくり返し聞いて「音」をカラダにしみこませていきます。英字字幕やスクリプトなどをつかって「音」と英語があうまで何回も聞きましょう
- 耳でコピーした「音」が言えるようになったら映画にあわせてマネしてみましょう
まとめ
『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』では、映画のセリフや名言に学ぶ英語フレーズを紹介しました。
この映画の魅力のひとつは、緊急事態においてチャーチルがなにをどのように決断するかの行動パターンです…とくに地下鉄でイギリス国民と話しあうシーン。
英語学習の面からいっても、セリフや名言は生の英語が聞けてのでリスニング強化にピッタリであり楽しみながら学べるところがよいですね。
映画のセリフや名言がきっかけで英語にたいする意欲が高まればさらに英語力を高めるトレーニングを重ねていけばいいのです。
じぶん独りで英語を学びすすむことも可能です。ただ、壁にぶつかってどうすればいいのか迷うと答えがわからずモチベーションが下がってしまうなんてことも!
そんなとき何でも聞ける英語学習のプロがそばにいたら時間もセーブできるし、英語をマスターする距離もグッと縮まります。