ひとつの見方をする人間もいれば、別の見方をする人間もいる…世の中には二種類の人間がいます。
恋愛でも友情でも人間関係においてひとつの価値観に没頭できると言うのは素晴らしいことです。しかし、それゆえに様ざまなことを見落としてしまい、視野を狭めてしまうというデメリットもあります。
自分の考えだけにとらわれてはいけない。そう英語で伝えたいときはどう表現すればよいだろう。
今回は、映画『ドクトルジバゴ』のなかでピッタリなセリフがあるので紹介します。
映画は革命に揺れ動いていたロシアにおいて、ラーラとトーニャというふたりの女性を愛してしまったジバゴの人生を描いた大河ドラマです。
本記事を読むと、つぎのことがわかります。
- ひとを諭すとき英語でどう伝えるか
- 戦いに勝つための作戦はどう立てるかを英語で学べる
- 現実には違えど、「もし~だったらどんなによかったのに」という気持ちを表す英語

出典:IMDb
ドクトル・ジバゴ あらすじ

引用:MIHOシネマ
世の中には二種類の人間がいる 『ドクトル・ジバゴ』に学ぶ英語フレーズ

映画は、主人公ジバゴ(オーマ・シャリフ)が幼いころに親を亡くし裕福なグロミーコ家に引き取られいくところから始まります。
成長したジバゴはグロミーコ家の娘であり結婚相手でもあるトーニャ(ジェラルディン・チャップリン)と幸せな日々を送っていました。
ジバゴが後に運命的な出会いをするラーラ(ジュリー・クリスティ)はロシア国内の貧困や不公平さに訴える野心的な革命家パーシャ(トム・コートネイ)と恋人同士でした。けれどラーラは革命にはそれほど関心はありません。
ラーラの母の愛人で弁護士のコマロフスキー(ロッド・タイガー)は美しく成長したラーラに悪びれることもなく手をだします。
その後、コマロフスキーはラーラから彼女の婚約者であるパーシャを紹介されるのですが、パーシャを立派な男だと讃える一方で第一印象はとても悪いものでした。
コマロフスキーは、革命に生きるなどと言ってる男に17歳のラーラが惹かれるのは当然だと共感はします。しかし、そのような男と一緒になれば明るい未来はないとコマロフスキーなりの親心からラーラに忠告するセリフがあります。
There are two kinds of men, and only two, and that young man is one kind. He is high-minded. He is pure.
男には二通りあるんだ。 彼の場合はこちらだ。 高潔で純粋。
He is the kind of man that the world pretends to look up to and in fact despises. He is the kind of man who breeds unhappiness; particularly in women. Now, do you understand?
表向きは賞賛されているが実は軽蔑されている。夢や理想で腹は満たされん、わかるか。
There’s another kind. Not high-minded. Not pure. But alive.
もう一方は高潔ではないが生きるすべを心得ている。
引用:ドクトルジバゴ IMDb
◎英語メモ
breed ~をもたらす、~に仕込む
映画のシーンでは、パーシャは気高い革命家ではあるけれど
“the kind of man who breeds unhappiness” 不幸をもたらす男だと諭しているわけです。コワルスキーは純粋な男ではありません。しかし、だからこそ現実を生きていくことは大変なんだぞとラーラの将来を案じているセリフです。
夢と理想にあふれる若い男女に共感いしつつも、そんな二人を頼りなく思ったのでしょう。
ドクトル・ジバゴ ロシア革命のはじまり
映画は第一次大戦がはじまり戦争に出兵する若者たちのシーンがあります。共産党員であるジバゴの腹違いの兄エフグラフ・ジバゴ(アレックス・ギネス)は、国民(特に農民)の不満を利用してロシア国内に革命を起こさせようと企んでいました。
すなわち帝政ロシアを倒しボルシェビキ(共産党)による独裁政治を狙っていたのです。
革命を起こすためには仲間を募らないといけません。しかし、戦争に勝つことに浮かれているようなときは何を言っても聞き入られないことをエフグラフはよく承知しています。
エフグラフは、戦争が長びき兵士たちが精神的につかれ果ててしまうタイミングをジッと待ちつづけます。
そして、ときが来たら部隊を戦線から離脱させ戦争を無理強いさせた帝政ロシアを倒そうと呼びかけます。
My task was to organize defeat, so as to hasten the onset of revolution.
わたしの任務は反抗分子を組織すること。それが革命となり革命は我々を勝利へと導く
I enlisted under the name of Petrov.
わたしはペトロフという偽名で隊にもぐりこんだ。
The party looked to the peasant conscript soldiers – many of whom were wearing their first real pair of boots.
党が狙っていたのは、はじめて新しい長靴を足にした徴用農民だ
◎英語メモ
hasten the onset of revolution 革命の兆しをあおる
the peasant conscript soldiers 徴用された 農民兵士
エフグラフはパーシャのように革命に生きる男ではありませんが、巧みな工作活動で党(自分)に有利に運ぶすべを知っています。
ドクトル・ジバゴ ラーラとの運命的な出会い
映画においてジバゴとラーラは会っては別れときが経つとまた運命的に出会います。互いに許されない恋の相手になりますが、すこしだけ一緒に生活できる場面があり、ラーラはもっと早くに出会えていたらよかったのにと昔のことを仮想するシーンです。
ラーラ:
Wouldn’t it have been lovely if we’d met before?
もっと前に会いたかった
ジバゴ:
Before we did? Yes.
平和だったころに。そうだね。
ラーラ:
We’d have got married, had a house and children. If we’d had children, Yuri, would you like a boy or girl?
結婚して子供も作ったのに。もしそうしてたら、ユーリ、男の子と女の子 どっちが欲しい。
ジバゴ:
I think we may go mad if we think about all that.
考えてみてもつらくなるだけだ。
ジバゴ:
I shall always think about it.
わたしはずっと考えていたい。
引用:1:40@YouTube
◎英語メモ
二種類の仮定法について
仮定方過去完了…過去の事実とはちがう話をするときに使う話法
Wouldn’t it have been lovely if we’d met before?
このセリフは、ジバゴとラーラがもっと前に出会っていたらという
「現在の事実と反対のことが起きていたら」
という仮想を表現するため過去よりもう一段ふるい話で気持ちを表しています。
セリフはラーラがジバゴに投げかける疑問文になっていますが、肯定文として書くと次のようになります。
If we had met before, it would have been lovely. (平和なころに)出会っていたなら、どんなに素敵だったことでしょう。
・仮定方過去…現在の事実とはちがう状態をあらわす
これに対してジバゴは現実にはふたりは戦時下で知り合ったようなものだし、ふたりとも結婚相手もこどもいます。よって、ラーラの問いかけに対してジバゴの返事は過去完了でなく単に過去形を使ったセリフになっています。
Before we did? Yes.
ここで、仮定方過去と仮定方過去完了をどう使いわけたらいいのかと思われるかもしれません。使い分けのコツとしては、ジバゴとラーラの会話が参考になります。
- ラーラ:ずっと昔にお互いが出会っていたらと遠い昔のことを想像している(過去の事実とちがうニュアンスを出すために過去形よりも更に遠いむかしを表す過去完了で話している)
- ジバゴ:自分もそう思うけれど、現実にはふたりはそうなっていない(現在はそうなっていないので少し前の気持ちをあらわす過去形で充分ニュアンスが出ている)
ドクトル・ジバゴ コマロフスキー:高潔ではないが生きるすべを心得ている

ほんの短い間だけでも幸せに暮らせたふたりですが、またしても別れが訪れます。しかも、今度はラーラの身に危険がおよぶ事態です。その窮地を救ったのがコマロフスキーです。
コマロフスキーは、自身で世の中には二種類の男がいると力説するだけあって、純粋な人間とは言えませんが、どんな危機的な状況でも姑息に生き抜くすべを知っていることがわかります。
まとめ
映画『ドクトル・ジバゴ』は、第一次大戦やロシア革命を背景にラーラとターニャというふたりの女性を愛してしまった主人公ジバゴの壮大な大河ドラマです。
『ドクトル・ジバゴ』には、世の中には二種類の人間がいる…つまり、「自分の考えだけにとらわれてはいけない」と教えてくれる英語フレーズがあります。
その他にも「何か作戦をたてるとき、それを英語でどんな風に言うか」、「もし~だったら、どんなによかったのに」など英語を組み立てるうえで参考になるセリフも紹介しています。
『ドクトルジバゴ』は毎年どこかしらの放送局で再放送される名作映画です。3時間もある長編映画なので観るのがおっくうに感じるかもしれませんが、一度は堪能してもらいたい映画です。