つまらない現在とちがってあの頃はすべてが輝いていた。
いつの時代でも聞こえてきそうなフレーズですよね…むかしに憧れたり懐かしんだり。
けれど、ほんとにその時代にタイムスリップできたらおなじ気持ちになるのでしょうか。
映画『ミッドナイト・イン・パリス』は、1920年代のパリこそ芸術がもっとも輝いていた時代だと信じている主人公が「創造的なことをなし遂げるために必要はことは何か?」を学び成長していくものがたりです。
主人公が肝心なことに気づく面白い大人のファンタジーコメディ。
ストーリーラインを追いながら劇中にでてくる名言ともいえる英語フレーズを紹介します。
ミッドナイト・イン・パリ あらすじ
引用:MIHOシネマ
地味だけど面白い ノスタルジーの良し悪し
むかしを懐かしんだり、憧れたりするノスタルジー(回顧)はときにネガティブな印象を与えてしまいます。
ロマンチストと言われるひとほどその傾向は高まるばかり。『ミッドナイト・イン・パリス』でもノスタルジーに憧れる主人公ギルがまわりに呆れられてしまうシーンがあります。
舞台は2010年のパリでのこと。ハリウッドで脚本家として成功しているギルは婚約者イネズとフランスにきていました。イネズの父親がシゴトのためフランスに来ることになったのでギルとイネズも便乗したわけです。
Nostalgia Is Denial ノスタルジーは拒絶だ
高級ホテルで一家がくつろいでいるとイネズは学生時代に憧れていたポールに再会します。ポールは妻キャロルとフランスにきていてソルボンヌ大学で教鞭に立つとのことでした。
みんなで観光に行こう!僕が案内するよとポールは誘いますがギルはインテリぶったポールの話なんてつまらなそうとノリ気ではありません。結局、イネズに説得されてパリの街を案内してもらうものの、ギルにとってポールの話は微妙にまちがっているし退屈そのもの。
つまらなそうな態度ばかりとるギルにイネズは頭にきてポールに「ギルは脚本家としては売れっ子だけど、どうなるかわからないような小説にてんてこ舞いしてるのよ。」とギルをさらし者に!
「へぇ、どんな話なの?」ときくポールにギルは答える気にもならなかったけれど、ここでもギルにイラついていたイネズは小説のタイトルは「ノスタルジー・ショップの男よ!」っとバラしてしまう。
ポールは「どの時代が良かったんだいノスタルジー君」っと小ばかにした感じで聞きます。
ギル「1920年代のパリさ!それも雨の降ってるときのね。」
なにそれ? という感じでみんなが引いているとポールは追い打ちをかけるように言います。
Paul: Nostalgia is denial – denial of the painful present… the name for this denial is golden age thinking – the erroneous notion that a different time period is better than the one one’s living in – it’s a flaw in the romantic imagination of those people who find it difficult to cope with the present.
ノスタルジーというのは拒絶だよ 苦悩する現代へのね それって ゴールデン・エイジ(黄金時代)思想というのさ
いまいる現在に合わないからって むかしは今より優れていたなんて思いたのさ まちがった思想だよ 現代に対処できない夢見がちなタイプによくある欠陥だな
引用:IMDb
◎英語メモ: the erroneous notion 誤った考え a flaw 欠陥 cope with 対処する
『The Japan Times Alpha』は英語学習にオススメな英字新聞です。 「Life & Culture」のコーナーで掲載されいるシネマ倶楽部は英語学習初心者も楽しめる映画が日本語注釈付で読めます!
ギルにとっては痛いところを突かれてしまったという感じですね 😉
ポール夫妻は夜になっても踊りに行こう!と盛り上がりますがイネズはノリ気でもギルはもううんざりという感じで帰ることにしました。ただ、帰るといっても知らない土地でフランス語もわからず道に迷い込んでしまいます。
ところが不思議なことが起こります。
真夜中の鐘がなったと思うとギルの目の前にみるからにアンティークな車が止まり、誰かがパーティーに行こうと声をかけてきます。
よくわからないけど付いていくことにしたギルは驚きます。ついた場所は1920年代のパリのパーティー会場だったのです。
さらにギルはパーティー会場で出会った人々におどろきを隠せません。なぜって、それはギルが憧れていた1920年代の偉人たちがいたからです。
小説の世界で言えばアーネスト・ヘミングウェイやフィッツジェラルド夫婦だったり、ジャズでいえばコール・ポーターがピアノで弾き語りをしていたりとギルは目の前で起きていることに興奮を抑えられません。
信じられないとはいえ、パーティー会場の次におとずれたカフェで目の前にヘミングウェイがいる。そこでギルは自分が書いてる小説を読んでみてくれないかと頼みます。
ヘミングウェイは断りますが、自分がいちばん信用している人物ガートルード・スタインを紹介しようと言ってくれます。
喜びのあまりすぐにホテルに戻って原稿をとりにカフェをあとにしたギル。そうだ、つぎに会う時間を決めなきゃとカフェに戻ったが、そこはただのコインランドリーに!?
次の日なんとも不思議な体験をしたとイネズに話しますが彼女は関心がない…彼女にもその体験をしてもらいたいとアンティークカーがきた場所に連れていきますが、待てど暮らせど何も起きません。
まちくたびれたイネズはもう帰る!とホテルに戻ってしまう始末。
おかしいな。あれは一度きりの出来事だったのかな?と不思議がるギルですが、しばらくして真夜中の鐘がなるとまたもやアンティーク調の車が現われます。
しかも、こんどは車の中にヘミングウェイが乗っていてガートルード・スタインの家に連れていってくれるというのです。
スタインの家につくなりギルは驚きます。というのも、そこには画家のパブロ・ピカソがいてスタインに自分の絵を見せながら意見を交わしているではありませんか。
ピカソの描いた絵の被写体はアドリアナ(マリオン・コティヤール)というピカソの愛人で魅力的な美女でした。しばらくすると、スタインはギルに渡された小説をはしりの部分をみんなに読んで聞かせます。
出だしだけでしたが、それを聞いたアドリアナはギルの小説を気に入ったと言ってくれます。ギルはその言葉やアドリアナの魅力にたちまち惹かれていきます。
Life Is A Little Unsatisfying 人生ってそういうもの
ある昼時のこと、ギルはノミの市で見つけた本を買います。どうしても内容を知りたかったギルはポールたちと観光したときロダンの「考える人」を解説してくれたフランス人のスタッフに頼んで英語で話を聞かせてもらいます。
わかったのは、1920年代にアドリアナが本の中でギルのことをとても想っている、惹かれていると書いてあるのでした。
やっぱりパリこそが、1920年代こそが自分がいるべき場所、そしてアドリアナこそが運命のひとだ!そう信じたギルは再会したアドリアナにイアリングをプレゼントします。すると、どこからか古風な馬車がやってきてふたりに乗るようにいいます。
ふたりが到着したのは見るからに雰囲気のある高級レストランのマキシム…なんと、ふたりは1920年代からベルエポックと呼ばれた1890年代にタイムスリップしていたのでした。
そして1890年代の偉人たちとも出会うことができて感激するギルとアドリアナでした。
アドリアナは感激のあまり「わたしはここ(1890年代)に残るわ。」騒々しいだけの1920年なんてうんざりしていたの。」といいます。
しかし、ギルは何かが違うことに気がつきます。
たしかに最初でこそ1890年代、1920年代に生きていた偉人たちやそれぞれの時代の空気にふれて感激したけれど、そこで起きていることは既に終わってしまったことばかり。
「ジュラシックパーク」で本物の恐竜を初めて見たあとに冷静にかたる考古学者みたいですね。
しかし、刺激的なものの慣れてきて飽きてしまうと、もっと新しい刺激が欲しくなり他の時代をもとめてしまう。
現実から逃げて別のゴールデン・エイジに行けたとしても、そこにいる偉人たちは本当にそこがゴールデン・エイジだと思っているのだろうか⁈ もしかしたら、偉人たちはもっとむかしの時代に憧れているのかもしれない。
アドリアナが1890年代に残りたいときいてギルはようやく目が覚めるのでした。そしてアドリアナとも別れを告げることにもなります。
Gil: Adriana, if you stay here though, and this becomes your present then pretty soon you’ll start imagining another time was really your… You know, was really the golden time.
Yeah, that’s what the present is. It’s a little unsatisfying because life’s a little unsatisfying.
アドリアナ、もし君がここに(1890年代)残るというなら、君にとってのここが現在になるんだ。でも、しばらくすると今度は他の時代こそが自分のゴールデン・エイジだと思うようになるよ。
そうさ、現在ってそういうものなんだ。だって、現在というのは少しもの足りなく感じるからね。なぜなら、それが人生だからさ。
引用:IMDb
ギルは自分が向きあうべき時代は自分が生きている2010年であって、なにか価値のあるものを書くなら自分に正直になって向きあい、過去への憧れは刺激にこそなれ、それに縛られてはいけないと悟ります。
ギルのふっ切れた気持ちはイネズや家族との関係や今までの生活にも変化を起こします。
必ずしも良いことばかりではないけれども新しい前向きなことも起きるムードを漂わせています。
まとめ
『ミッドナイト・イン・パリス』は、1920年代のパリこそ芸術がもっとも輝いていた時代だと信じている主人公が「創造的なことをなし遂げるために必要はことは何か?」に気がつくところが見どころです。
むかしが懐かしかったり、羨ましかったりすることはあるけれど、自分が生きている現在こそがもっとも想像力を高めてくれる!
ノスタルジーがもたらすメリットは現在から未来へと向かうとき、大きな刺激になってくれる反面、そこにとどまり続けると思考停止に陥って新しいことへのアイデアがとまってしまうデメリットも持ちあわせています。
バランスとりながら生きていくのは大変ですが映画で語られているように「それこそが人生」ですね。
劇中ところどころで聴けるジプシーギターもパリの街並みととてもあっていて心地いい 😛