健康でいるためには、適度な睡眠、バランスの取れたおいしい食事、良好な人間関係など楽しく生きる要素がかかせません。
すべてが揃って健康そのものという人は歳を追うごとに少ないとは思いますが、自分なりの正直な健康法を見つけることは大切です。
例えば心に抱えている問題がいつまでも邪魔していたりしたら、仕事にも影響があるし本当の健康とは言えません…そんな気持ちとどう向きあうか? ひとつの答えが映画に描かれています。
今回は、映画『フライト』を通して英会話フレーズを紹介します。
『フライト』 あらすじ
旅客機のパイロット、ウィトカー機長(デンゼル・ワシントン)は旅客機を飛ばすのは3日で10往復するという労働環境としては不健全な日々を送っていた。
人の命をあずかるパイロットというストレスからなのかウィトカーはアルコールやドラッグにどっぷり依存していた。
フロリダ州オーランドからアトランタ行きのフライトがある日、同僚であり愛人でもあるキャビンアテンダントの トリーナ(ナディーン・ヴェラスケス)と一緒の部屋で起きコカインをキメてから出勤するというありさまであった。
ドラッグの効用によって何ごともなかったように旅客機を飛ばすウィトカー機長。離陸するなり乱気流に見舞われたが副操縦士の心配をよそに、一流パイロットとしての腕を発揮して乱気流からぬけ出してしまう。
飛行機のシステムに頼らず自力で乱気流を抜けだしてしまうところはさすがなのだが、操縦が安定して自動操縦に切り替えると、あとは副操縦士に任せてしまって自分は酒をたしたオレンジジュースを飲みほしてだらしなく居眠りをしてしまう。
しかし、着陸が近づいてきたとき飛行機が原因不明のトラブルに見舞われ、高度3万フィートから急降下を始める。
機内は騒然となり墜落寸前までいったがウィトカーはとっさの判断で奇跡的な緊急着陸に成功。このときは大事故から大勢を救ったすばらしいパイロットとして英雄視されたウィトカー機長。
だが、添乗員2名をふくむ6名もの犠牲者をだしてしまう。ウィトカー機長の愛人でもあったトリーナも子供を助けようとシートベルトを外して作業したがために亡くなってしまった。
一夜にして国民的英雄になったウィトカー機長だが、じぶんも事故で気絶し入院先で受けた検査で血液中からアルコールとドラッグが検出されたことから、過失致死の疑いをかけられる……。
果たしてウィトカー機長の行く末は英雄なのか、または犯罪者なのか。
『フライト』 アルコール依存から抜けだす難しさ
Drinking My Whole Life
少数の犠牲者ですんだ事故とはいえ、誰かが責任を負わなければならない。
パイロットの過失責任がないことを立証しようと 、ウィトカーの友人でパイロット組合の幹事をしているチャーリー(ブルース・グリーンウッド)は、航空事故に長けている弁護士ラング(ドン・チードル)を雇い無実への筋書きを作っていきます。
チャーリー:
Remember, if they ask you anything about your drinking, it’s totally acceptable to say “I don’t recall”. もし何か飲んでいたかと聞かれても「覚えていません」と答えろよ。
ウィトカーは自分がアルコール中毒でそのことが事故とは関係ないことはわかっていても、事故調査の過程でウソをつくことが自分を追いつめていました。
ウソとわかればパイロットとして偽証罪に問われることは間違いない。けれど、それ以上に自分の人生がウソで固まっていると自覚していたからです。
ウィトカー機長:
Hey, don’t tell me how to lie about my drinking, okay? I know how to lie about my drinking. I’ve been lying about my drinking my whole life. おい、おれに飲酒のことで指図するなよ、わかったか。おれはサケのことでずっとウソを言い続けてきたんだ。生きてきた間ずっとな。
ウィトカーの依存症はかなり重症で抜け出そうと必死になるほど再び酒とコカインに手を出してしまいます。そんな矢先、ウィトカーの助けになってくれる女性ニコール(ケリー・レイリー)が現れます。
ニコールも母親を亡くしたショックで薬物依存になり、クスリの過剰摂取で気を失いウィトカーと同じ病院に運ばれ、病室を抜け出してこっそりタバコを吸っていたところ出くわしたのでした。
ふたりは依存症から抜け出すという似た境遇ということもあり、お互いに惹かれあっていきます。しかし、ニコールはつき合ううちにウィトカーの依存症は自分以上に助けが必要だと気づきます。
事故や依存症から逃げる話をするウィトカーに「あなたは助けが必要よ」とうったえるニコール。
自分が悪いことはわかっていても素直になれないウィトカーは開き直ってしまいます。
ウィトカー:
I choose to drink! And I blame myself! I am happy to! And you know why? Because I choose to drink! I got an ex-wife and a son I never talk to! And you know why? Because I choose to drink! 好きで飲んでるんだ!ダメだって思っても!楽しいよ! なぜかわかるか? 好きで飲んでるからだ 女房と別れせがれは話もしない。どうしてかって? おれが酒を選んだからだ!
結局、ウィトカーは聞く耳を持たず喧嘩になりニコールは彼の元を去ってしまいます。
ニコールという恋人がいなくなってしまったウィトカーに飛行機事故をめぐる公聴会が近づいてきます。ウィトカーを救おうと友人や弁護士はさまざまな手を打ち、打ち合わせ通りにウィトカーが証言させることでウィトカー機長の潔白まであと一歩のところでした。
しかし、亡くなったキャビンアテンダント(愛人)トリーナの話が公聴会で議題にあがったとき、ウィトカーは自分に正直にならないと生涯ビクビクして生きていくことになると思い。自分は事故当時に酒を飲んでいたこと、自分はアルコール依存症だということを公聴会で証言します。
『フライト』 人生ではじめての自由
For The First Time In My Life, I’m Free
事実を証言したウィトカー機長…当然ながら責任から逃れることはできません。
どうにかしてウィトカーを助けようとしてくれた周りの人たちの話を聞かなかった、もしくは聞けなかったことでみんな去ってしまいました。
すべてを失ったかのようなウィトカーですが、同時に得たものもありました。つまり、この先は誰にもウソをつかなくていい、自分に正直に生きていけるという「自由」を手に入れたのです。
偽証罪で刑務所行きとなったことで、管理の厳しい刑務所暮らしのおかげもあって少なくともアルコール依存症からは克服できています。
ウィトカーは責任を果たすために刑務所にいました。そこでかれは刑務所の仲間に自分のそれまでのストーリーを話します。
It was as if I had reached my lifelong limit of lies. I could not tell one more lie. まるで生涯のウソをつき切ったみたいだった。 それ以上ウソをつけなかった。
Maybe I’m a sucker. Because if I’ve told you one more lie, I could have walked away from all that mess. Kept my wing and kept my whole sense of pride. たぶんバカだったのかも。 あともう一つウソをついたらこんなハメに陥らなくて済んだんだ。ニセの誇りをあげて空をとんでいた。
◎英語メモ
walk away from~ 立ち去る
More importantly I could have avoided being locked up here with all you nice folks last 13 months. なにより、みんなとここにいることもなかった。 ステキなみんなと13か月もね。
But I’m here. And I’d be here for at least next four or five years. And that’s fair.
fair 正当
だが俺はここにいる。そして少なくともあと4、5年はいることになるだろう。当然だ。
I betrayed public trust. 俺は国民の信頼を裏切ったんだ。
◎英語メモ
betrayed betray 「裏切る」の過去形
国の信頼、恋人や家族の信頼、仲間の信頼とあらゆる信頼を裏切ってしまったと話すウィトカーですが、正直な気持ちを話すことでウソで固めてきた人生から解放されたのでした。
For the first time in my life, I’m free. 人生ではじめて自由になった。
まとめ
『フライト』は全編にわたって緊迫感と気が滅入るような気持ちが描かれている映画ですが、いったんは見放しても最後には戻ってきてくれる仲間や家族がいることが救いです。
アルコールやドラッグばかりでなく、なにかしらの依存症からぬけ出すためには相当な困難があることは映画を観ていてもすごく伝わってきます。
ウィトカー機長は40代後半か50代始めくらいの設定だと思いますが、年齢的には既に大きなことを成し遂げたとか、昔は相当な腕前をもっていた、家族とも幸せだったなどどこか寂しさを紛らわせていくうちに何かに依存するようになってしまったと思わせてくれる人物が描かれています。
仕事に励むすべての中高年が共感できる映画です。